「でも、僕、出来が悪いから」

奇蹟に近いことが起きたと、多分、少年にはわからなかったろう。
Dが右手を伸ばして、少年の頭を撫でたのだ。

「出来は知らんが、勇気はある」

と彼は言った。低く冷たく、しかし、優しく。

「誰よりも」

ルリエは微笑した。小さな顔は誇りに満ちていた。
絶対に忘れません、と小さな顔は告げていた。
それを浮かばせたのが自分だということを。

彼はDの笑顔を見たのだった。