2004-08-04 忘却録音 ”どうして、泣かないの?” ”うん、どうしてだろうね” 困ったような顔で、兄はわたしを見下ろす。 瞳はまだとても悲しげで、だからすごく優しかった。 ”男の子は、泣いちゃダメだから?” 父の言葉を思い出して訊いてみても、兄は首を振るだけだった。 ”ねえ。なんで泣かないの?” ”うん。泣きたくても、泣けないんだ” ―――それは、特別な事だからね。