D―血闘譜

「あの貴族は、悪人なんだね?」
「人間から見ればな」
「貴族から見ると違うの?」
「さて、な」
「貴族の中に悪人はいないの?」
「いるだろう」
「じゃ、いい人は?」
「それも―いるだろう」
「また会えたらいいわね」
娘はうつむいていた。Dへの言葉だったのだ。
Dの口もとが揺れた。笑ったのかもしれない。