True Colors

仰此無苦庵は、孝を勤べき親もなければ、憐れむべき子もなし。こころは墨に染ねども、髪結ふがむづかしさに、つむりを剃り、手のつかひ不奉公もせず、足の駕籠かき小揚やとはず。七年の病なければ三年の蓬も用ひず。雲無心にして岫を出るもまたをかし。詩歌に心なければ、月花も苦にならず。寝たき時は昼も寝、起きたき時は夜も起る。九品蓮台に至らんと思ふ欲心なければ、八萬地獄に落つべき罪もなし。生きるまで生きたらば、死ぬるでもあらうかとおもふ。